【REPORT】第3回 経営者イノベーション・ラウンドテーブル
2026/08/31

経営者イノベーション委員会(以下EIC)が、「経営者イノベーション・ラウンドテーブル」を2026年8月3日に開催しました。
その様子を、レポートとダイジェスト映像にてお伝えいたします。
ダイジェスト映像は、以下の青枠内のYouTube動画を再生してご覧ください。
EIC YouTube チャンネル
第3回 経営者イノベーション・ラウンドテーブル(ダイジェスト映像)
神田明神の杜に響く、日本の「再起動」への号砲
統制という鎧を脱ぎ捨て、草の根の構想力が未来を編み上げる——千年の歴史を刻む神田明神。その厳かな空気が漂う「令和の間」に、この日、日本のイノベーションの次なる「OS」を巡る熱い対話が満ちた。これは、単なる会議の記録ではない。産・官・学・民という異なる背景を持つリーダーたちが、それぞれの「立場」という重い鎧を脱ぎ捨て、一人の当事者として停滞の壁を突破しようとした、静かなる変革のプロローグである。
歴史の鏡に映る、私たちが囚われた「不自由」の正体
対話の幕開けを飾ったのは、経済史家・岡崎哲二氏と広野彩子氏による、時間を遡る旅だった。私たちが無意識に、そしてあまりにも長く囚われてきた「1940年体制」という呪縛。戦時下の統制経済から高度成長期まで、日本を支えてきたのは「政府が特定分野を選び、企業がそれに従う」という、あまりにも密接で、しかし強固な二人三脚のシステムだった。
だが、フロンティアが消失した現代において、かつての「成功体験」への過剰適応こそが、今の停滞を生んでいる事実は皮肉と言わざるを得ない。新原浩朗氏は、米国の「群れ行動(ハード・ビヘイビア)」という言葉を引用し、上が決めたことに皆が揃ってしまう危うさに警鐘を鳴らした。今、政府に求められているのは「指揮官」としての振る舞いではなく、民間が自らの意志でリスクを取り、挑戦できる環境を整える「補完者(イネーブラー)」への転換なのだ。
サイロを溶かし、異質な知を繋ぐ「コネクター」の息吹
ラウンドテーブルのあちこちから漏れ聞こえてきたのは、組織や分野の壁——「サイロ化」という深刻な病への危機感だった。大学も企業も行政も、それぞれの縦割りの中で同質性を重んじるあまり、イノベーションの源泉となるはずの「変人」や「外れ値」を、知らず知らずのうちに排除してしまっているのではないか。
この膠着状態を打ち破る鍵として浮かび上がったのは、組織を横断して点と点を繋ぐ「コネクター」という存在だ。それは、単なる善意やボランティアに委ねられるものではない。高い専門性と「横断的知性」を兼ね備え、社会的価値を持つ新しい「職業」として確立されるべきものである。
クリエイターの感性をビジネスへと変換する目利き、経済合理性と社会価値の両立という「共通の物語」を紡ぐリーダー、そして生活と仕事が溶け合うカオスの中から新たな出会いを生む場を育てる人々。彼らがしなやかにセクターの境界を越えることで、日本のイノベーション・エコシステムは初めて呼吸を始める。
失敗を祝福し、次世代に「遊び」を託す勇気
この日の対話で最も人々の心に響いたのは、宇宙開発を例にした「失敗」への向き合い方だった。スペースXが打ち上げに失敗しても喝采が送られ、そこから学びを得る文化がある一方で、日本は一度の停滞をも厳しく糾弾してしまう。イノベーションには、効率性という定規では測れない「遊び」や「余裕」が不可欠であり、無駄に見えることの中にこそ、本質的な価値が眠っている。
そして、私たちが今、最も真摯に向き合うべきは、若い世代へのバトンタッチである。かつての戦争が強制的にシニアを退出させた歴史を振り返りながら、今の日本には、意図的に若い感性を取り込み、彼らが「死ぬ気でやりたい」と思える舞台を整える責任があることが共有された。
結びに代えて:規律ある挑戦者たちのコミュニティへ
議論を締めくくるにあたり、主宰の紺野登氏は「場(Ba)」の概念の重要性を改めて説いた。神田明神という、伝統と革新が共存するこの場所そのものが、日本の新しいイノベーションの姿を象徴している。
私たちは今、イノベーションを単なる「憧れ」から、組織の「規律」へと定着させる時を迎えている。かつて品質管理(QC)を自らのDNAとしたように、今度はイノベーション・マネジメントシステム(IMS)を共通言語として使いこなし、再び世界の信頼を勝ち取らなければならない。
「語ることは一日でできるが、動かすには何年もかかる。しかし、現場の草の根の動きこそが社会を変える」——小宮山宏氏 (EICエグゼクティブアドバイザー)のコメントのように、この神田明神での対話を持ち帰り、それぞれの組織で小さな一歩を踏み出す。その一人ひとりの当事者意識が連鎖し、大きなうねりとなった時、日本の「再起動」は真の意味で完遂されるはずだ。



























第3回
経営者イノベーション・ラウンドテーブル
内容:第3回「経営者イノベーション・ラウンドテーブル」
日時:2026年8月3日(月)15:30~20:30(14:30より昇殿参拝)
場所:神田明神 文化交流館4階「令和の間」(東京都千代田区外神田2-16-2)
企画:経営者イノベーション委員会(EIC)
運営:一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)
アジェンダ
14:30~15:05 昇殿参拝集合(明神会館)・本殿参拝
15:30~15:50 オープニング
15:50~16:25 第1部 日本のイノベーションのビジョンの場を考えるtone setting~経済システム変遷の視座
16:15~15:50 ラウンドテーブル・議論オリエンテーション
16:25~17:20 第2部 実現のためのラウンドテーブル
17:30~18:20 第3部 横串の共有
18:20~18:30 クロージング
18:45~20:30 交流ミーティング(明神会館)
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https://transformjapan.org/eirt/official_rt1_20250804/