【REPORT】IM Lab Open Days 2025
2026/02/19

経営者イノベーション委員会(以下EIC)が2025年8月4日に開催した「経営者イノベーション・ラウンドテーブル」を契機に、産学連携によるイノベーション・エコシステムの構築を支援する「IM Lab」が始動しました。これを受け、一般社団法人Japan Innovation Network(以下JIN)主催により、「IM Lab Open Days 2025」が2025年10月9日に開催されました。
その様子を、レポートとダイジェスト映像にてお伝えいたします。
ダイジェスト映像は、以下の青枠内のYouTube動画を再生してご覧ください。
EIC YouTube チャンネル
IM Lab Open Days 2025(ダイジェスト映像)
エコシステム戦略なき企業に未来はない
競争優位の源泉は、もはや個社のバリューチェーンにはない――。2025年10月9日、JIN主催の「IM Lab Open Days 2025」で、ロンドン・ビジネス・スクールの世界的権威、マイケル・ジャコビデス教授が投じたこのメッセージは、日本の経営者たちに重く響いた。エコシステム同士が覇権を争う時代、日本企業は「オーケストレーター」か、それとも「パートナー」か。生き残りをかけた戦略の再定義が、今まさに始まっている。
なぜ今、エコシステム戦略なのか
イベントの冒頭、JINのChairperson理事である紺野登氏と、東京科学大学 教授の大嶋洋一氏が登壇し、IM Lab(イノベーション・マネジメント・ラボ)の活動趣旨を説明。紺野登氏は、「もはや企業単体のバリューチェーンでは限界がある。業界や地域の垣根を越えたエコシステムの構築が不可欠だ」と問題提起。大嶋洋一氏は、エコシステムを構築するための方法論やデザイン原則、そしてそれを担う「エコシステム・ビルダー」という新しい人材像の重要性を語り、IM Labがその知的探求の拠点であることを強調した。
スイス時計産業の凋落が示す「戦略的失敗」
ロンドンと東京をオンラインで結んだ特別講演にて、マイケル・ジャコビデス教授は、スイスの時計産業がデジタル化の波に乗り遅れた歴史的事例から議論を切り出した。その敗因は、単なる技術革新への遅れではない。「自社の強みを過信し、外部環境の変化とそれに伴うエコシステムの再編を見誤った」ことによる、紛れもない戦略的失敗だったと断言する。
現代のビジネスは「エコシステム同士の競争の時代」だと定義するマイケル・ジャコビデス教授。企業が取るべき戦略的な立ち位置は3つしかない。エコシステム全体を指揮する「オーケストレーター」、中核機能を担う「パートナー」、そして製品やサービスで補完する「コンプリメンター」だ。
マイケル・ジャコビデス教授がここで強調したのは、「誰もがオーケストレーターになる必要はない」という極めて実践的な視点だ。GEやマイクロソフトといった巨大企業でさえ失敗した事例を挙げ、「自社の提供価値を深く理解し、どの役割を担うことが最も強みを活かせるのかを見極めることが肝要だ」と説く。生成AIがセクターの境界線を破壊し、物理とデジタルが融合する今、自らのビジネスモデルを再定義し続けられるか否かが、企業の生死を分ける。
講演の最後にマイケル・ジャコビデス教授が投げかけた問いは、シンプルかつ本質的だ。「あなたのエコシステム戦略は何か?」「自社の価値を最大化するために、どの役割を担うべきか?」
浮き彫りになる日本の課題――「変化への鈍感さ」と「イネーブラーの不在」
マイケル・ジャコビデス教授の問題提起を受け、パネルディスカッションでは日本の現在が炙り出された。パネリストは、IM Labの中核を担う「Team IM Lab」から紺野登氏、大嶋洋一氏、そしてSUNDRED株式会社 代表取締役の留目真伸氏に加えて、「IM Labメンバー」として、秋田県立大学 教授の森田純恵氏、東洋大学名誉教授・一般社団法人CREAPS-DESIGN代表理事の今村肇氏、株式会社ジェイフィール コンサルタントの佐藤将氏の計6名。
「エコシステムという言葉が流行する一方、多くの日本企業は“似たもの同士”で集まるだけで、真の協業ができていない」。そう口火を切ったのは、留目真伸氏だ。紺野登氏も「海外ではビジネス環境の変化をリアルタイムで捉え、戦略を修正するのが当たり前。しかし日本の経営者は、自分たちの会社の時間軸でしか世界を見ていない」と、変化に対する鈍感さに警鐘を鳴らす。
なぜ日本は変われないのか。大嶋洋一氏は、「お代わりないですか?」という日常会話を例に挙げ、「日本社会は変化よりも現状維持を良しとする傾向が強い」と文化的背景を分析。この「変化を恐れる文化」が、新たな挑戦を阻んでいるのではないかと示唆した。
さらに会場からは構造的な問題の問いもあった。スタートアップを支援する中間支援組織や大学の「イネーブラー」と呼ばれる人材のリテラシー不足である。「意欲ある起業家や研究者がいても、それを支え、スケールさせる仕組みや人材が育っていない」。宝の持ち腐れともいえる現状が、そこにはあった。
国家レベルの構想力は必要か? エコシステムの“苗床”からの挑戦
悲観論だけではない。今村肇氏は、欧州の学会での異分野交流の重要性に触れ、「知を交換する“場”が新しいアイデアの源泉となる」と、オープンな対話文化の醸成を提案。
最終的に議論は、「日本がエコシステムを構築するには、国家レベルの構想力が必要なのではないか」という大きな問いへと発展する。トップダウンか、ボトムアップか。明確な答えは出なかったが、産官学が連携し、それぞれの役割を果たす必要性では一致した。
最後に紺野登氏は「このIM Labという場自体が、まさにエコシステムの“苗床”だ」と締めくくった。エコシステム戦略なき企業に未来はない。この冷徹な現実を前に、日本のリーダーたちは自らの立ち位置を定め、未来をデザインすることができるのか。挑戦は、まだ始まったばかりだ。










IM Lab Open Days 2025
名称:IM Lab Open Days 2025
日時:2025年10月9日(木) 15:30~19:00
場所:東京都港区新橋1-1-13 アーバンネット内幸町ビル3階
CROSSCOOP セミナールームA
企画・運営:一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)
アジェンダ:
15:30~16:00 オープニングセッション
16:15~18:00 ロンドン・ビジネス・スクール Michael Jacobides教授 特別講演「Ecosystem Strategy as Competitive Advantage」
18:00~19:00 Team IM Lab(大嶋・留目・紺野)によるエコシステム戦略についてのパネル
19:00~21:00 懇親会